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ラノベっぽいと軽い気持ちで読んでいたら、終盤に思いきり突き放された。けれど感想を書いていたら、結局ラノベっぽくなってしまった。 『ボトルネック』
『ボトルネック』  米澤 穂信 ★★★☆☆



亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。
ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。
もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。
世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
(裏表紙より)







文体が軽いというか表現がラノベっぽくて(漫画的?というのか。「平易」とはまた異なる。どちらかというと「安易」。)、題材もざっくり言うとパラレルワールドということで、さくさくと読めた。
昭和っぽい表紙イラストとは裏腹に、中盤まではミステリというよりファンタジー要素が強い。もちろん、家庭の不和、恋人の死など、暗い影を落とす要素も多々あるのだが、主人公リョウの「姉」にあたるサキが暗い雰囲気でも笑い飛ばしてしまう明るさと強さを持っていて、ともするとコメディぽい部分もあるほどなのだ。このサキのキャラクターとリョウとのやりとりは、個人的にとても気に入っている。

しかし、終盤に入ると、様相が一変する。不穏な気配がして、話がどんどんシリアスになっていく。パラレルワールドものにはお決まりの、主人公が成長して元の世界に戻り、ポジティブに新たな一歩を踏み出す―というお約束が覆され、リョウに突きつけられた現実とともに、結末は読者に完全に投げられる。(委ねられる、というやさしい感覚ではない。)
ポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかも、読者次第になっている。
最後まで読んで初めて、あぁ、ファンタジーじゃなくてミステリだな、と納得させられるのである。
感想としては正直、うーん、というより、えー!?という感じ。



多分、もやもやしている最大の理由は、リョウの受けとめ方だ。
ざっくり言うと、「みんなが不幸になったのはボクのせいだったんだ、ウワーン」みたいな感じなんですが(違)
特に思春期にはよくある思考パターンだけど、どんだけ自意識過剰なんだと。
大体、「間違いさがし」だって片手とちょっと分くらいしかしていないんだし。
それに、乱暴な例だけれど、「今」の時点で例えばリョウの世界で死んでいた人がサキの世界では生きていたからといって、ひねくれた見方をすれば、サキの世界のその人が未来にもっと悲惨な死に方をするかも知れない。そのとき、リョウはどっちが「プラス」だったと判断するのか。

確かに、リョウが見てきた部分では自分のせいでって感じるのもわからなくはないけれど、とらえようによっては、それだけ世界におけるリョウの「重み」って大きいっていうことなんだから、それに気づいたこれから、どういう選択をするかによって、いくらでも運命は変わるっていう風にもとらえられるんじゃないかな。
自分一人いなくても、世界は何事もないかのように回っていく。それは確かだけれど、その「世界」は自分がいる世界とは、確実に違う。
一人の存在は、プラスかマイナスかなんて一つに決まるものではなくて、一人が色々な存在と複雑に絡み合って作っているものが世界そのものだから。
それはある意味、最後にリョウが感じていたようにとても怖いことだけれど、だからこそ選択は価値のあることでもあるのだと思う。
…なんて、感想を書いていたら結局三流のラノベになってしまった。
書きながら、ふと「バタフライ・エフェクト」を思い出した。



テーマは嫌いではないし、キャラクターもそれなりに魅力はある。ただ、感情移入できるほど十分に掘り下げられているとは言い難い。
テーマはそこそこに重い割には、文体が軽すぎて、表現に深みがない。
表紙のイラストも、ラノベにしては昭和くさいけれど、文芸小説にしては漫画的に過ぎる。
全体的に、ラノベにしては重く、かといって成人向けの小説にしては軽い、中途半端な印象を受けてしまった。
主人公の年代やテーマを考えても、中高生向けかな。

ちなみに、タイトルの「ボトルネック」という言葉は、中盤に新聞の引用として出てくる、のだが。
タイトルに据えた象徴的な言葉なんだから、ストレートに説明しちゃ駄目だろうと個人的には思う。しかも、完全に辞書的な文章(「ボトルネック…○○のこと。」みたいな感じ)の引用っていう、超ベタな説明のしかた。語感は悪くないけれど、使い方が良くない気がして、残念。
そもそも、根本的に「ボトルネック」って、主人公の世界の中での位置づけを表すにはちょっとニュアンスが違うような気がするんだけれどなぁ、なんとなく…。

☆3は、完全にサキのポイント。







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二度読む価値のないものは、一度読む価値もない。(マックス・ヴェーバー)




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tag : ボトルネック 米澤穂信 パラレル ミステリ バタフライ・エフェクト

なぜだろう、読み終わってみて、感動というより、猛烈にもやもやしている。 『朗読者』
『朗読者』  ベルンハルト・シュリンク 作 松永 美穂 訳 ★★★☆☆



15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。
「なにか朗読してよ、坊や!」――ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。
人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。
彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落としていた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
(裏表紙より)







これを恋愛小説というのだろうか。もちろん、恋愛小説であるという側面もある。けれど、猛烈にもやもやする。
あらすじや他の人のレビューを見て、心に沁みるような、切ない、それでいて透明な愛の物語を期待して読み始めた。けれど読み終わった今、感じているのは、猛烈なもやもやだ。

それは、二人の「愛」の始まりがあまりに唐突だったからか、(日本的な価値観で言ったら)男女逆なら犯罪じゃないか…などとつい無粋なことを思ってしまったからか、「ぼく」が真っ直ぐなだけではなく弱いからか、家族や戦争や自由と尊厳など愛以外の視点が多すぎるからか、はたまたハンナの最後の「決断」をどう捉えたらいいのかわからなかったからか。
この猛烈なもやもやの決定的な理由は、そのどれでもあって、どれでもないような気もする。

物語は「ぼく」=ミヒャエルの一人称で進み、ハンナが何を考えているのかは、数少ない「ぼく」の推測のほかは、「ぼく」の視点から語られる言動で推し量るしかない。むしろ、「ぼく」の戸惑いの方がダイレクトに伝わってきてしまい、余計にわからなくなる。

この物語ははたして純愛なのだろうか。「ぼく」は、思春期の少年特有の真っ直ぐさ(それは後先考えないという意味での真っ直ぐさでもあったのだろう)で確かにハンナを愛していたけれど、ハンナのどこに惹かれたのかは、性的なこと以外は具体的に書かれてはいないし、ハンナもこの「坊や」のどこに惹かれたのか、全くわからない。
でも、愛とはそもそも言葉に表せないものなのだから、言葉で答えを探そうとすること自体が無粋なのかも知れない。
それでもあえて考えるなら、二人が惹かれあったのは「タイミング」ゆえなのではないかと思う。(「恋はフィーリング・タイミング・ハプニング」なんていう言葉があるが、本作の二人の関係は、まさにこれを満たしている。)子どもから大人の男へと成長する過程にあったミヒャエルと、孤独なハンナ。二人の出逢い自体が運命だったのだろうか。

二人の関係は、確かにずっと続いていくものではなかったと思う。
それでもやはり「ぼく」にもハンナにも、他の選択があったのではないかと思ってしまう。なぜハンナはその決断をしてしまったのだろう。ミヒャエルはどうやってこれからを生きるのだろう。最後の一文が、余計にやり切れなさを感じさせる。

この作品は、見る視点によって感じることが変わるだろうと思う。
例えば、恋愛以外の要素では、中盤の自由と尊厳に関する「ぼく」と父との問答が、とても印象に残っている。
幸福と、自由と尊厳は別である―。
もう少したったら、違う視点でまた読み返してみたい。

ちなみに、本作は「愛を読むひと」というタイトルで映画化されている。主演のケイト・ウィンスレットがアカデミー賞主演女優賞を受賞している。
映画は観ていないが、この作品を映画にしたら、綺麗に見えすぎてしまうのではなかろうかと思う。だって、映画は客観的だから。原作を読んで感じたもやもやは、きっと二人の表情の「深み」として昇華されているのだろう。それにしても、映画はこの物語をどの側面から描いたのだろう。
蛇足だが、大人になってからは映画をほとんど観ない私の中では、ケイトはタイタニックのイメージで止まっているので、ハンナとなかなか重ならない;







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その中に一片の哀れみをも持たぬ書物なり詩なりは書かれない方がいい。(オスカー・ワイルド)




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日常に潜む隙間に、ふと迷い込む感覚を覚える。 『透明な迷宮』
『透明な迷宮』  平野 啓一郎 ★★★★☆



深夜のブタペストで監禁された初対面の男女。見世物として「愛し合う」ことを強いられた彼らは、その後、悲劇の記憶を「真の愛」で上書きしようと懸命に互いを求め合う。その意外な顛末は……。
表題作「透明な迷宮」のほか、事故で恋人を失い、九死に一生を得た劇作家の奇妙な時間体験を描いた「Re:依田氏からの依頼」など、孤独な現代人の悲喜劇を官能的な筆致で結晶化した傑作短編集。
(裏表紙より)







筆者の唱える「分人主義」が私の考え方に合うのではないかと人に勧められて、初めて読んだ平野作品。

短編集で、どの作品も、日常と非日常の絶妙な按配で、日常という安定の中に潜む隙間にふっと落ち込んでしまうような、何とも言えない漠然とした不安定さを感じさせる。
日常的に読むにはきついけれど、思わず自分の存在を見直したくなるようなこういう哲学的な作品は、嫌いではない。
村上春樹作品は比喩などの言い回しが抽象的すぎて、なかなかすっと読みにくいものが多いけれど、この短篇はいずれも、一見突拍子もない設定なのに、自然に入ってくるシンプルな文体のおかげで、日常に違和感なく溶け込んでいる。だからこそ、その日常に潜む隙間に気づいてしまった時、余計に動揺する。



表題作の「透明な迷宮」は、設定が突飛すぎて、最後までどうにも受け入れられなかった。
「彼らの一瞬は、永遠へと飛躍しない。」(P97)という言葉が、いやに気取った言い回しで浮いているように感じられたのだけれど、なぜか強く印象に残ってしまっている。なんだか、筆者の思う壺のような気もしないでもないが…。

「消えた蜜蜂」世界観は、この本の中で一番好きな作品。

「family affair」ストーリーに特別感じるものはなかったが、拳銃というアイテムと登志江の心が読めない表情が、物語に独特の緊張感を生み出していて、なんとなく最後まで引きこまれてしまった。

「火色の琥珀」火に恋する男の独白。いやいやありえないだろ…と思いつつ、読んでいくうちに理解できるような気になって、段々違和感がなくなってしまったのが怖い。

「Re:依田氏からの依頼」時間という一つの感覚をモチーフとして、自分が見ている世界の不確かさ―同じものを見ていても、決して他者と「同じ」ようにはとらえられない、絶対的な孤独のようなものを感じて、そういう意味ではとても共感した。
歩行者や車の動きやエスプレッソマシンから滴る雫の描写からは、目に見えない時間の感覚を鮮やかに思い浮かべることができて、とても面白かった。
数年前、「第六感」をテーマにしたあるテレビ番組で、人とは違う色覚をもつ人のことを取りあげていた。その人たちは通常の人よりも色を「細かく」知覚することができる。私たちには全く同じ色にしか見えないいくつもの「赤い」トマトを、「黄色っぽい」ものや「暗い赤」のもの…と区別していた。印象派の画家には、そういった繊細な色覚を持つ人が何人もいたのかも知れないのだという。そんなことを、ふと思い出した。



この短編集のいずれの作品にも言えることだけれど、境界や段差を感じさせずにまるでスロープのようになめらかに、気づけば日常や自分の価値観とは全く違う場所に導かれてしまっている―そんな感覚にさせられたのは、やはり筆者の筆力だろう。
この人は作品ごとに文体も色々変えているようだから、他の作品が好きになれるかはわからないが、もっと読んでみたいと思った。







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読書しているときはわれわれの脳はすでに自分の活動場所ではない。それは他人の思想の戦場である。(ショーペンハウアー)




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tag : 平野啓一郎 分人主義 透明な迷宮

人生の大きな目標を感じ、心が熱くなる作品。 『三十光年の星たち』
『三十光年の星たち』  宮本 輝 ★★★★☆

 


彼女にも逃げられ、親からも勘当された無職の青年、坪木仁志は謹厳な金貸しの老人、佐伯平蔵の運転手として、丹後・久美浜に向かった。乏しい生活費から毎月数千円を三十二年に渡って佐伯に返済し続けた女性に会うためだった。そこで仁志は本物の森を作るという運動に参加することになるのだが――。
若者の再起と生きることの本当の意味を、圧倒的な感動とともに紡ぎ出す傑作長編。
(上巻裏表紙より)







『青が散る』に心を揺さぶられて以来、宮本作品を続けて読んできたけれど、やっと『青が散る』と同じ空気感をもった作品に出逢えた気がする。

主人公は、弱いところもあるが、純粋で真っ直ぐな心をもった一人の青年。佐伯老人との出逢いを機に、人生の目的を見いだしていく。

『青が散る』の燎平が辰巳教授に導かれたように、主人公の仁志は佐伯老人に導かれる。
純粋な、それでいてまだ自分の道を見定めていない青年を、厳しく温かく見守る、人生の先達だ。
見えないものを見ようと努力する。自分を磨くには、働いて働いて働き抜くか、叱られて叱られて叱られぬくこと。人生の本当の勝負は三十年後から。
辰巳教授の言葉が多く印象に残ったように、佐伯老人が仁志に投げかけた言葉が心に残っている。

事件や病気など、「できごと」を核にした作品は、ドラマチックだし心を揺さぶりやすい。けれど、私が好きなのはそういう作品ではない。かと言って、なにげない日常を描いて、なんとなく心に沁みたり、ほのぼのできるような、ふわっとした作品でもない。日常の中にある葛藤や、人との出逢いを通した心の変化、日々の生活の中で見出す生きることの意味、真っ直ぐに生きることの大切さ、暗さや重さもありながらそれでもなお光り輝く青春―そういったものを描いた作品だ。
『青が散る』やこの作品のように、できごとではなく日常の中にある「生きることの意味」を正面から描いた作品は、どれだけあるだろう。

この作品に出逢えたことで、ようやく自分が求めているものが具体的にわかり始めた気がする。

(蛇足ですが、☆-1は、仁志と佐伯以外の登場人物の魅力が物足りなかったこと、所詮金持ちの話だよなぁ…と思ってしまう部分がどうしてもあったこと、「ツッキッコ」という店名のいまいちなセンス、表現の一つ一つとか、そういう細かい部分で、やはり『青が散る』のもつ研ぎ澄まされた透明感と重厚感には及ばなかったからです。)







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読書の時間を大切にしなさい。一冊の本との出会いがあなたの生き方を変えてくれることだってあります。(ジョセフ・マーフィー)




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tag : 宮本輝 三十光年の星たち 人生

良くも悪くも「綺麗な話」ではなかった。 『錦繍』
『錦繍』  宮本 輝 ★★☆☆☆



「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」
運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。
往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
(裏表紙より)







錦繍とは―①錦と刺繡をした織物。 ②美しい織物。立派な衣服。 ③美しい紅葉や花のたとえ。 ④うるわしい字句の詩文のたとえ。(三省堂)

タイトルが綺麗で、レビューの評価がとてもよかったこともあり、かなり期待していたのだが・・・。
個人的には、うーん・・・という感じだった。

序盤がかなり退屈で、けれど事件のあらましが明らかになるにつれて気持ちがぐっと入り込んできたところで、モーツァルトあたりから下り坂になって、最後は完全に低空飛行、といったところ。



なぜだろう、と考えてみて、いくつか思い当ったことがある。

一つは、書簡という主観的な形式がそもそも好みではなかったこと。

一つは、亜紀の文章が、極めて文学的な表現と口語的な表現とが混ざっていて、いちいち気になってしまったこと。あなたはもう送ってくるなと言ったけれど好きにさせてもらうわ、的な、本筋とは関係のない言葉が多すぎて、いちいち引っかかってしまったこと。
手紙っぽくしているということなのだろうが、どうせなら文語と口語どっちかに振り切って欲しかった。中途半端が一番気になる。

一つは、他の人のレビューを見てなるほどなと思ったのだが、極めて男性目線の(男性に都合のいい)女性の描き方であること。
これは村上春樹氏の作品でも感じたことだし、男性が作者である以上(女性がB/Lを描くのと一緒で)仕方のないことだとも言えるが、今までさほど気にならなかったのは、一人称が男性だったからだ。主人公の「男性のフィルター」を通して女性を見ていると思えば、そんなもんだと飲みこめる。
その点、この作品は書簡という形をとっている手前、女性の一人称で話が進む場面が多いので、どうしても違和感が大きい。

一つは、亜紀が、脳性まひをもって生まれた息子のことを「業」だと言っていたこと。それがわかった時だけでなく、小説の後半になっても、障がいをもって生まれたことをネガティブにとらえているように思われる表現が多々あり、どうしても引っかかってしまった。
これは、亜紀というより、著者の考え方が投影されているのではないだろうか。昔の小説だから仕方ないのかな、とは思うが。

そして、たぶん一番は、不倫をベースにした話であるということ。
有馬に至っては、男とはそういう(浮気をする)ものだから許せ、などとのたまう始末。
私たちは不思議なもので、ドラマや小説など物語としての「不倫」には美しさを見いだし、共感して盛り上がったりする。けれど、芸能人の「不倫」には、自分が被害を被ったわけでもないのに容赦なく大バッシングをする。身近な人の不倫であれば言わずもがな。
もちろん、現実的には倫理に反するからこそ、非現実の世界で楽しむという気持ちはわからないでもないのだが。
この小説は、決して不倫を美化したものではない。けれど、「愛と再生のロマン」などと言われてしまうと、何だかなぁ・・・という気持ちである。

とはいえ、良いと思ったところがあったとすれば、全体的な表現の美しさと、亜紀の父がなんとなく好きだったこと、そして由加子の死の「理由」を説明しなかった(させなかった)ことだ。
その点で、★2。実際には1.5くらいか。



「青が散る」にハマって宮本作品を読みだしたものの、未だに「青が散る」に匹敵するどころか、次ぐ作品にも出会えない。
初期の宮本作品をいくつか続けて読んでいるが、人間臭い作品が多い。
私が「青が散る」に感じた、深い湖のような、重厚な透明感を持った作品は、宮本作品の中ではむしろ例外的なのだろうか。






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読書百遍義おのずからあらわる。(「魏書(ぎしょ)」)




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映(えい)

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    心を揺さぶる本、価値観を変えてくれる本、爽やかさとともに苦さや切なさを感じさせる本、表現が美しい本、静かな感動を起こしてくれる本、心の奥深くに沁みる本、重さの中にも透徹した雰囲気を持つ本、知的好奇心をくすぐってくれる本、が好きです。


    おもしろそうなのがあったので始めてみた→コトノハ



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