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リバウンド
『リバウンド』  エリック ウォルターズ(原著) ★★★★☆



大事なのは、シュートして得点をかせぐことだけじゃない。
「失敗したシュートを次にどうやって決めるかだ」
(帯より)







バスケットで結ばれた、二人の少年の成長の物語。

表紙には、バスケットボールと、片手を突き上げて叫ぶ少年の絵。
これだけを見ると、よくあるスポーツ青春小説か、と思う。
少年たちが、バスケットを通じて挫折を乗り越え、努力と友情を知り、心の繋がりを深めて、成長していく。
そんな想像が容易にできるくらい、「スポーツもの」は今やありふれている。

しかし、この作品は、バスケット以外にもう一つ、大切な要素がある。
それは裏表紙を見るとわかる。
描かれているのは、車いすの少年だ。

本作品に登場する主な人物は、日本で言うと中学2年生にあたる、バスケットボールが好きな2人の少年。
感情がコントロールできずに、友人たちに流されてしまい、いつも問題を起こしてしまって先生に睨まれているショーンと、才能あるバスケットボール選手だったものの、事故で脊髄を損傷して歩くことができなくなり、過去と未来、生と死の間でもがいているデーヴィッド。そして、その家族や友人たちだ。

思春期ならではの、感情がコントロールできなかったり、大人に対して素直になれなかったり、友人に流されたり、伝えたいことをうまく言葉にできなかったり、異性にドキドキしたりする複雑な感情が、優しく繊細に描かれている。
スコットたちのように、ただの悪者になってしまいそうな人物に対しても、よく読むと筆者は温かい視線をもっているように思う。
こういう、「悪いこと」をしてみたくなったり、自分を必要以上に強く見せようとしたりする時期は、思春期ならば誰にでもありうることだからなのではないだろうか。
私は教師なので子どもを見守る側の目線で作品を読んだが、思春期の子が読むと、等身大の自分をショーンやデーヴィッドに重ねて読むことができるだろう。

そして、初めに書いたように、もう一つこの作品が投げかけるテーマが、障がいとの向き合い方だ。
ショーンは、デーヴィッドと友人になってからも、車いすが関わる話題や行動には、変に気を遣ったり、どうすることがデーヴィッドにとって一番いいのか戸惑っている場面が多く見られる。
そして、それは家族であっても同じだった。このあたりが、とてもリアルに感じられた。
大抵、こういった作品やドラマでは、家族が一番の理解者になるのが普通だからだ。
例え家族であってもわからない、「経験した人にしかわからない、絶対的な感情や感覚がある」ということを書いているからこそ、リアリティがあった。

印象的なエピソードとして、ショーンが車いすに乗る体験がある。
この体験を通して、ショーンは車いす生活を送る人を「見る」側と「見られる」側の両方の気持ちがわかるようになる。
車いすから日常の風景を見つめることで初めて知った、道路やエレベーターなどの怖さ。
車いすに乗ることで初めて気づいた、周りからの好奇や同情、偏見の目。その人にとっては「優しさ」のつもりであっても、それが人を傷つけることもあるのだということ。
そして、今までどこか腫れ物に触るようだった「車いすのデーヴィッド」に対する接し方の、答え。

最後の方で、ショーンがきつい言葉を投げかけてくるデーヴィッドに対して、以前のように怒ったり戸惑ったりするのではなく、ただ静かにありのままを受けとめ、「友達でいたい」と言ってデーヴィッドを救ったシーンには、とても感動した。
相手の全てを理解しようと焦るより、理解できる部分もそうでない部分も「受け入れる」ということが、人と人とが一緒に生きていく上で一番大事なことなのだと教わった気がした。

もちろん、この作品はデーヴィッドの目線で読んでも、色々なことを感じることができる。
一人で絶望や死への恐怖、周りからの目線と闘ってきて、いつも自分を強く見せようと気を張っていたデーヴィッドが、ショーンという友によって救われ、しがらみから解き放たれる。
この話は、ショーンの成長の物語であるのと同時に、デーヴィッドの成長の物語でもあるからだ。

終始、思春期の少年少女の心に寄り添う、著者の温かい目線を感じた。
ページ数は多いが、優しい語り口で、長さを感じさせずに読める。
それでいて、単なる青春小説ではなく、多くのことを感じさせてくれる作品だった。





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読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。
私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。
人と人との関係においても。国と国との関係においても。(皇后美智子)







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tag : リバウンド バスケットボール 車いす

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映(えい)

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