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人生の大きな目標を感じ、心が熱くなる作品。 『三十光年の星たち』
『三十光年の星たち』  宮本 輝 ★★★★☆

 


彼女にも逃げられ、親からも勘当された無職の青年、坪木仁志は謹厳な金貸しの老人、佐伯平蔵の運転手として、丹後・久美浜に向かった。乏しい生活費から毎月数千円を三十二年に渡って佐伯に返済し続けた女性に会うためだった。そこで仁志は本物の森を作るという運動に参加することになるのだが――。
若者の再起と生きることの本当の意味を、圧倒的な感動とともに紡ぎ出す傑作長編。
(上巻裏表紙より)







『青が散る』に心を揺さぶられて以来、宮本作品を続けて読んできたけれど、やっと『青が散る』と同じ空気感をもった作品に出逢えた気がする。

主人公は、弱いところもあるが、純粋で真っ直ぐな心をもった一人の青年。佐伯老人との出逢いを機に、人生の目的を見いだしていく。

『青が散る』の燎平が辰巳教授に導かれたように、主人公の仁志は佐伯老人に導かれる。
純粋な、それでいてまだ自分の道を見定めていない青年を、厳しく温かく見守る、人生の先達だ。
見えないものを見ようと努力する。自分を磨くには、働いて働いて働き抜くか、叱られて叱られて叱られぬくこと。人生の本当の勝負は三十年後から。
辰巳教授の言葉が多く印象に残ったように、佐伯老人が仁志に投げかけた言葉が心に残っている。

事件や病気など、「できごと」を核にした作品は、ドラマチックだし心を揺さぶりやすい。けれど、私が好きなのはそういう作品ではない。かと言って、なにげない日常を描いて、なんとなく心に沁みたり、ほのぼのできるような、ふわっとした作品でもない。日常の中にある葛藤や、人との出逢いを通した心の変化、日々の生活の中で見出す生きることの意味、真っ直ぐに生きることの大切さ、暗さや重さもありながらそれでもなお光り輝く青春―そういったものを描いた作品だ。
『青が散る』やこの作品のように、できごとではなく日常の中にある「生きることの意味」を正面から描いた作品は、どれだけあるだろう。

この作品に出逢えたことで、ようやく自分が求めているものが具体的にわかり始めた気がする。

(蛇足ですが、☆-1は、仁志と佐伯以外の登場人物の魅力が物足りなかったこと、所詮金持ちの話だよなぁ…と思ってしまう部分がどうしてもあったこと、「ツッキッコ」という店名のいまいちなセンス、表現の一つ一つとか、そういう細かい部分で、やはり『青が散る』のもつ研ぎ澄まされた透明感と重厚感には及ばなかったからです。)







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tag : 宮本輝 三十光年の星たち 人生

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映(えい)

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