2018-02-12(Mon)
教養とは人生における面白いことを増やすためのツールであるとともに、グローバル化したビジネス社会を生き抜くための最強の武器である。その核になるのは、「広く、ある程度深い知識」と、腑に落ちるまでの考え抜く力。
そのような本物の教養はどうしたら身につけられるのか。
六十歳にして戦後初の独立系生保を開業した起業家であり、ビジネス界きっての教養人でもある著者が、読書・人との出会い・旅・語学・情報収集・思考法等々、知的生産の方法のすべてを明かす!
(裏表紙より)
この手の本は読みたいと思っても、言葉が難しかったり著者の意見と合わなかったりでなかなか読み進められないことが多いけれど、この本は文体もシンプルで、教養に対する基本的な考え方が一致していたこともあり、読みやすかった。新たな発見があったというよりは、自分の考え方や価値観を再認識した感じです。
「第1章 教養とは何か?」「第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない」は、全編にわたってそうだそうだ、と頷く部分が多かった。
教養は、視野を広げ、自分の考えを深めるためのツールである。それが人生を面白くすることにつながる。
教養というと、日本の社会ではただ知識が多いだけの人がもてはやされたり、ビジネスに直結する経済や仕事のハウツーのような知識ばかりが重宝されがちだが、本物のリベラル・アーツとはそういった偏狭なものではないのだと声を大にして言いたい。
ただ、その大切さを言葉で説明するのは難しい。自分はそういったものがとても好きだけれど、それを人に説明することはなかなかできない。
そういう意味で、単に自分の人生(心)を豊かにするという側面からだけでなく、ビジネスにおける人との出会いと関わりという具体的な側面からも述べられていたのが、とてもよかった。実利主義のビジネスマンにも理解しやすいと思うからだ。
いろいろな人と公私で接する中で、単に気が合うとかではなく、本当に「面白い」と感じる(funnyではなくinterestingの意味で)人は、片手で数えるくらいしかいない。
頭の引き出しが多く、誰とでも話をすることができて、自分の世界を広げてくれる。そういう人にはなかなか出会えないものだ。
振り返ってみれば、歴史に名を残している人物は、大抵専門分野をいくつも持っている。たとえば、万有引力を発見したニュートンも、天文学(物理学)だけでなく、自然哲学、数学、物理学にも長けていたという。
今はどうか。学問が細分化・高度化する中で、学問の根幹というか、大局的な視点で学ぶ人がいなくなりつつあるのではないか。
現在生きている著名人だと、村上陽一郎氏や北野武氏、もっと身近なところでいうと林修氏(知識量ではなくスタンスとして)などが、私のイメージする真の教養人に近い。
また、本書を読む中で、日本の教育システムや学生の採用システム、社会保障制度やさまざまな社会問題について、少なからず矛盾や違和感を覚えていた部分を的確に指摘されており、具体的な海外の判例や提案も示されていて、勉強になった。
ただ、後半の海外の、特に中国の学生と日本の学生の比較になってくると、腑に落ちない部分が大きくなってきた。
読み進めるにつれて、その理由がわかってきた。
前半では、「グローバルリーダー層」に焦点を絞って話をしていたのが、後半になると「大学生」と一括りにしているからだ。けれど、その違和感は、自分が日本の「大学生」のイメージに縛られているからだろうとも思う。
改めて考えてみると、大学とはそもそも高等教育の場であるのだから、大なり小なりグローバル社会の中で多くの人と関わりながら生きていくことを目的に学んでいるはずだ。
しかし、大学は選ばなければ全入時代の今、本書の中でも書かれているように、実際にそのような志をもって学んでいる学生は、正直多くはない。
日本ではそれが当たり前だが、世界ではそうではない。そのことを意図せずに思い知らされた感もある。
通読して思ったことは、この本は基本的にはリーダー層に向けて書かれたものだということ。
もちろん、そうでない人にとっても役に立つ部分はたくさんある。
けれど、筆者が語りかけている相手は、やはりリーダー層なのだと感じずにはいられない。
世の中にはいろいろな人がいる。
英語がほとんどできなくてもノーベル賞をとった科学者もいる。
大学に行かなくても、一つの道を極めて、そこから生きる道を学んでいく、伝統芸能の職人やスポーツ選手のような人もいる。
中卒でも、ハングリー精神とコミュニケーション能力で一大事業を起こし、社長に上り詰める人もいる。
あるいは、近代文明とは無縁の、自分たちの見えている世界の中だけで暮らしている、未開の地の民族がいる。
ただし、世界を動かしていく人というのは、やはり限られた層なのだ。
知識や教養の量は、結局は機会と余裕(時間的、精神的、あるいは経済的)の有無に左右されるのだ。
日本は、世界的に見れば、物質的には恵まれており、教育の機会も均等に(長短はあるが)与えられている。
だからこそ、時代の変化とともに行き詰った今が、日本人にとって転換点なのかもしれない。
備忘録(興味をひかれた箇所)
P40 七つの分野からなるリベラルアーツ
P49 連合王国での初等教育
P57 教養とは、さまざまな相手を惹きつける人間的魅力につながる
P64 国語と数学で考える
P172 各国の社会保障支出と国民負担率
P184 フランスの少子化対策
P203 あくまでも歴史は一つである
P205 愛国心とナショナリズムは別物
P233 日本人の価値観や人生観は仕事に偏りすぎている
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読書の方法を知っている人はすべて、自分自身を拡大し、存在できる道を増やし、人生を有意義で、面白く、最大限に活かす力を持っている。(オルダス・ハクスレ)
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