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孤独か、それに等しいもの
『孤独か、それに等しいもの』 大崎善生



今日一日をかけて、私は何を失ってゆくのだろう―。
高校三年の初秋、ピアスの穴を開けようとする私に、恋人がささやいた一言―大切なものを失くしてしまうよ。
あれから九年を経て、私は決まりきった退屈きわまりない毎日を過ごしていた・・・(「八月の傾斜」)

憂鬱にとらえられ、かじかんでしまった女性の心を映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説全五篇。
明日への小さな一歩を後押しする、珠玉の作品集。









前に『パイロットフィッシュ』のレビューで書いたように、二つの作品は根底に流れるテーマが共通している。

―人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである。―

これは『パイロットフィッシュ』の冒頭である。

本短編集では、その記憶に囚われていた主人公たちが再び前を向いて歩きだすまでが描かれている。

全五篇からなっているが、上記のテーマが強く現れている「八月の傾斜」「孤独か、それに等しいもの」「ソウルケージ」と、残りの「だらだらとこの坂道を下っていこう」「シンパシー」が交互に収められている。
個人的には、やはり前者の3篇が好きである。





この3編の主人公の女性は、それぞれ大切な人を失くした過去を持ち、それに囚われて苦しんでいる。
そしてその過去と向かい合い、前を向いて歩いていくために、その過去と決別する。何かを失いながら。涙を流しながら。
前を向いて歩いていく。

人の温もりに支えられて。



彼女達は決して自分ひとりの力で立ち直る、強い人間ではない。
いや、もしかしたら、そんなことの出来る人間なんて、いないのかも知れない。

人は人とともに生きている。
それによって苦しみ、傷つき、支えられながら。

「ソウルケージ」のラストの部分に、この3編のメッセージが込められているのかも知れない。

―あの籠の中から私を救い出すものは、白い粉による化学反応ではなくて、知らないうちに自分を取り囲んでいる人間の優しさなのだ。―
と。









背表紙の文章を読むと、小さな感動を覚える作品のように思われるが、私の心には大崎善生の文章がぴったりはまってしまうようで、主人公達の心の痛みがダイレクトに伝わってしまい、何度も泣いた。
何かを失いながらも、痛みと決別して前を向いていく彼らに余計に共感し、もっと泣いた。



キレイすぎてあまり共感できないという人もいるかも知れない。
しかし私は、限りなく透明で繊細な心を描いた、大崎の作品が好きである。

余談になってしまうが、何より、私はこのタイトルが好きだ。
この言葉の使い方が、とても好きだ。







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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

tag : 角川 大崎善生 孤独か、それに等しいもの 孤独 痛み 繊細 過去 未来

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