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つきのふね
『つきのふね』 森 絵都 ★★★☆☆



あの日、あんなことをしなければ……。
心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき――。
近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編!
(裏表紙より)









著者が児童書として書いたというだけあって、一見いかにもよくあるような青春もののように感じる。
しかし、万引きや薬、心の病、死、放火事件…といったワードが散りばめられていて、どことなく緊張感や危うさを感じる。
特に、智の心が「静かに」壊れていく様子は、よく伝わってくる。
しかも、そういう重いテーマを重く書くのではなく、あくまで作品全体はさらりと流れていくような筆致で、ターゲットである読者層(中高生)を意識したのだろう。
綺麗すぎる話は苦手なので、最後の学校のエピソードや予定調和な終わり方(タイトルの意味が明らかになるところ)は、それまで作品に入っていた心が少々引いてしまったが、読後感は悪くはなかった。

ただ、本作は長さの割には登場人物が多く、やや風呂敷が畳みきれなかった感があったように思う。
とは言え、登場する人がみんな物語の中心に収束していくなんて、現実世界ではありえないのだから、「大事そうに見えて通り過ぎてしまった」ということはある意味自然なのかも知れない。

私は現代小説を読む時に、どうしても登場人物の「言葉」が気になってしまうのだが(例えば、中学生が「おぼろげで…」(p10)なんて日常会話で使うかよ、とか)、だんだんと作品に入っていくにつれ気にならなくなった。
最初はいかにもこのような作品にありがちで抵抗があった「勝田くん」のキャラクターにも、読み進めるうちに徐々に慣れていった。
これは私にとっては結構大事なことだ。
いつまでも作品に入り込めず、最初の摩擦感を引きずったまま終わってしまうこともある。
本作は、私にとってそれなりによかったということだろう。



それにしても、紹介文の「奇跡のような傑作長編!」とは、さすがに煽りすぎではないか?
奇跡というほどでもないし、長編でもないし。。。
同じ「奇跡の…」という言葉を使っている『疾走』と比べると、「奇跡」という言葉がどうしても軽く感じてしまう。
このパターンは、もしや…と思ったら、案の定角川。
もっと等身大の紹介文でも、作品の魅力は伝えられると思うのになぁ。







==============

自分の魂の友を求めるような気持ちで読書をすることだ。それが身についていれば、孤独に押しつぶされることは決してない。(斎藤孝)






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