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疾走
『疾走』上下 重松清 ★★★★★



広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。
教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる……。
十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化!(上巻裏表紙より)







学生の頃に読んで、しばらく抜け出せないくらいの衝撃を受けた作品。
感想を書こうと思ってもなかなか書けず、いつの間にか読んでから10年近くが経ってしまった。
レビューを書くにあたり、ところどころ読み返したが、やっぱり重かった。

家族や思春期の少年少女を描いた、アットホームで温かい作品が多い重松清だが、この作品は真逆を行く。
「ひとり」の少年を描いた、重く、苦しく、生々しく、痛々しい作品だ。
私はこの作品が初めての重松作品だったから、その後スタンダードな重松作品を読んで、驚いた。



この作品では、主人公のシュウジを徹底的に「ひとり」にする。
家族が残酷なまでにバラバラになり、誰かと繋がったと思ったら、遠くに行ってしまったり、関係が崩れてしまったり、死んでしまったりして、結局「ひとり」になる。
それが顕著にあらわれているのが、語り口。
この作品は、シュウジを主人公にした「おまえ」という二人称で書かれている。
読んでいくうちにわかるのだが、二人称の語り手は作中に登場する神父だ。
こうしてシュウジは、徹底して一人になる。
最後に物語としては少し希望が見えるが、シュウジ自身の幸せではない。

ここまで少年を追い詰める必要があったのか、と思う。
ここまで精神的に、肉体的に、社会的に、性的に、少年を蹂躙する必要があったのか、と思う。(特に性的描写は、若すぎるうちに読むとトラウマ物です。)
けれど、その「ひとり」こそが、重松清の書きたかったものだったのだろう。
まるで、彼がいつも何作品もかけて描いている温かいものと対を成すものを、この一作品にすべて込めたかのような、執念のようなものさえ感じる。

こんなに読んでいて辛い小説はなかった。
部分部分を読み返すことはあるが、通読は未だに一度しかできていない。
けれど、忘れられない作品だ。



余談だが、この作品は映画化されている。
どう頑張っても小説の「再現」などできるはずはないが、違う作品として興味はあったので観に行った。
主役が当時は駆け出しのNEWSの手越君ということもあり、どうなるかと思ったが、思っていたよりも良かった。
もちろん、彼の演技云々や小説との比較で賛否あるのはわかるが、制作陣が決してアイドルの履歴にするためではなく、真摯に作品を作っているのは伝わってきた。
原作を忠実に再現するなんてどだい無理なのだが、SABU監督は、それをしようとしたわけではないだろう。
映画の方がずっと表現が綺麗(汚さ、生々しさを削っている)だし、際どい描写も当たり前だがない。
けれど、表現方法は違っていても、本質的な部分はきちんと描かれていると私は思うし、映画としてはこれでむしろ良かったと思う。
生きていくとはどういうことなのか、手越君目当てで映画を見に来た10代の少女たちにこの大きな問いを投げかけるには、十分だっただろう。

手越君では暗闇に堕ちたシュウジを描くには足りなかったけれど、逆にそれでも懸命に一筋の光を求め続けるシュウジの想いは伝わってきたから、これはこれでよかったと思う。
脇を固めるベテランの俳優陣もよかった。
寺島進の鬼ケン、大杉漣の新田、柄本佑のシュウイチ、トヨエツの神父ははまり役すぎて、小説を読んでいても、気づけば彼らの顔と声で頭の中で再現されてしまうほどだ。
アカネは中谷美紀さんが演じていたが、もう少し柔らかいイメージの人の方が個人的にはよかった気がする。もちろん、演技は素晴らしいんだけども。
音楽もとても良かった。今でもよく思い出します。






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書物の新しいページを1ページ、1ページ読むごとに、私はより豊かに、より強く、より高くなっていく。(チェーホフ)






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tag : 角川 重松清 疾走

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