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なぜだろう、読み終わってみて、感動というより、猛烈にもやもやしている。 『朗読者』
『朗読者』  ベルンハルト・シュリンク 作 松永 美穂 訳 ★★★☆☆



15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。
「なにか朗読してよ、坊や!」――ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。
人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。
彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落としていた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
(裏表紙より)







これを恋愛小説というのだろうか。もちろん、恋愛小説であるという側面もある。けれど、猛烈にもやもやする。
あらすじや他の人のレビューを見て、心に沁みるような、切ない、それでいて透明な愛の物語を期待して読み始めた。けれど読み終わった今、感じているのは、猛烈なもやもやだ。

それは、二人の「愛」の始まりがあまりに唐突だったからか、(日本的な価値観で言ったら)男女逆なら犯罪じゃないか…などとつい無粋なことを思ってしまったからか、「ぼく」が真っ直ぐなだけではなく弱いからか、家族や戦争や自由と尊厳など愛以外の視点が多すぎるからか、はたまたハンナの最後の「決断」をどう捉えたらいいのかわからなかったからか。
この猛烈なもやもやの決定的な理由は、そのどれでもあって、どれでもないような気もする。

物語は「ぼく」=ミヒャエルの一人称で進み、ハンナが何を考えているのかは、数少ない「ぼく」の推測のほかは、「ぼく」の視点から語られる言動で推し量るしかない。むしろ、「ぼく」の戸惑いの方がダイレクトに伝わってきてしまい、余計にわからなくなる。

この物語ははたして純愛なのだろうか。「ぼく」は、思春期の少年特有の真っ直ぐさ(それは後先考えないという意味での真っ直ぐさでもあったのだろう)で確かにハンナを愛していたけれど、ハンナのどこに惹かれたのかは、性的なこと以外は具体的に書かれてはいないし、ハンナもこの「坊や」のどこに惹かれたのか、全くわからない。
でも、愛とはそもそも言葉に表せないものなのだから、言葉で答えを探そうとすること自体が無粋なのかも知れない。
それでもあえて考えるなら、二人が惹かれあったのは「タイミング」ゆえなのではないかと思う。(「恋はフィーリング・タイミング・ハプニング」なんていう言葉があるが、本作の二人の関係は、まさにこれを満たしている。)子どもから大人の男へと成長する過程にあったミヒャエルと、孤独なハンナ。二人の出逢い自体が運命だったのだろうか。

二人の関係は、確かにずっと続いていくものではなかったと思う。
それでもやはり「ぼく」にもハンナにも、他の選択があったのではないかと思ってしまう。なぜハンナはその決断をしてしまったのだろう。ミヒャエルはどうやってこれからを生きるのだろう。最後の一文が、余計にやり切れなさを感じさせる。

この作品は、見る視点によって感じることが変わるだろうと思う。
例えば、恋愛以外の要素では、中盤の自由と尊厳に関する「ぼく」と父との問答が、とても印象に残っている。
幸福と、自由と尊厳は別である―。
もう少したったら、違う視点でまた読み返してみたい。

ちなみに、本作は「愛を読むひと」というタイトルで映画化されている。主演のケイト・ウィンスレットがアカデミー賞主演女優賞を受賞している。
映画は観ていないが、この作品を映画にしたら、綺麗に見えすぎてしまうのではなかろうかと思う。だって、映画は客観的だから。原作を読んで感じたもやもやは、きっと二人の表情の「深み」として昇華されているのだろう。それにしても、映画はこの物語をどの側面から描いたのだろう。
蛇足だが、大人になってからは映画をほとんど観ない私の中では、ケイトはタイタニックのイメージで止まっているので、ハンナとなかなか重ならない;







==============

その中に一片の哀れみをも持たぬ書物なり詩なりは書かれない方がいい。(オスカー・ワイルド)




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tag : 朗読者 ベルンハルト・シュリンク ドイツ文学 愛を読むひと

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