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種族を超えた友情の寓話は、私たち人間と重ねられるか。 『あらしのよるに 完全版』
『あらしのよるに 完全版』  きむら ゆういち=作 あべ 弘士=絵 ★★★★☆



累計350万部突破のロングセラー「あらしのよるに」(全7巻)が、2014年でスタートから20周年を迎えます。
オオカミのガブとヤギのメイの友情物語に感動した子どもたちも、もう大人になっているはず。「あらしのよるに」を次の世代に手渡すために、そして、あらためて読みなおして味わうために……。
7巻分の物語が一冊で読める、「完全版」の登場です。
(Amazonより)







オオカミとヤギの友情の物語。いわゆる寓話です。
「お昼ごはんといっしょに、お昼ごはんを食べるようなもんすから。あっ、こりゃ、しつれい。」など、クスッと笑える台詞や、心が和む場面もたくさんあるのだけれど、後半に向けてだんだん話が重くなってくる。(重く、とは言っても、子どもに読み聞かせるのにもちょうどいい程度ですが)

本能と理性の闘い、仲間と一人(匹?)の友のどちらをとるか、どんな状況でも友だちを信じられるか、苦しい時に自分よりも友だちを大切にできるか、友だちの欠点や自分と合わないところも受け入れられるか、そして、見かけや所属ではなく「心」を見ることができるか。
人間に置き換えてみると、おとなでも考えさせられることがたくさんある。
第6章「ふぶきのあした」で、いよいよお互いに生きるか死ぬかとなった時、お互いを「いのちをかけてもいいと思える友だち」だと思えた場面は、心にぐっときた。

絵もとても温かく、素敵でした。
あとがき対談によると、表紙の絵は、いろいろな色を塗った紙の上から黒いクレヨンを塗って削って・・・ではなく、あとから色を入れる形で書いているようです。大変だから・・・。(うーん要らん情報だった気も・・・)







==============

書物は青年時代における道案内であり、成人になってからは娯楽である。(コリアー)




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「動的平衡」という言葉の衝撃。 『生物と無生物のあいだ』(追記)
『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一 ★★★★★



生命とは何か?生命科学最大の謎に迫る!
生物も無生物も、原子から成り立っている。しかし我々は瞬時にその違いを見抜く。
いったい何が両者を分かつのか?
ミステリー仕立てで読ませる分子生物学入門!
(Amazonより)









以前に書いたレビューの追記です。



著者は、「生命とは何か」という永遠の問いに対して、一つの答えを出している。それが、

「生命とは動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)にある流れである」(P167)

である。
この「動的平衡」という言葉は、私にとって大きな衝撃だった。
著者のこの「生命の捉え方」は、私の世界に対する見方を全く変えてしまった。そして、今までよりも遥かに大きな世界が現れた。



日々の「人間としての生活」の中で汲々とする中で時々この本を読み返すと、ふと自分を俯瞰的に見ることができて、ありきたりな言い方になるが、自分はなんて小さい存在なのだろうと感じる。
それは満天の星空を眺めているときの気持ちに似ている。
こんな宇宙の深淵をいつも見つめながら、それを追究することのできる研究者は、なんて幸せな職業なのだろうと思う。
ノーベル賞を受賞した研究者たち―とりわけ応用ではなく純粋理学の研究者たちは一様に、自分の興味のあることを追究してきただけだ、というような感想を言うけれど、あれは一時の社交辞令的な謙遜ではなく、真実なんだろう。
宇宙の深淵に比べれば、人間が作った一つの賞など取るに足りないのだから(それが人間社会の中ではどんなに価値を持つものであっても)。






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本を読むということは、自分の知らない世界がもっとあるということを知ること。(岩田徹)




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川を舞台にした、人間の命溢れるドラマ。 『泥の河 螢川 道頓堀川(川三部作)』
『泥の河 螢川 道頓堀川(川三部作)』  宮本 輝 ★★★☆☆



よどんだ水に浮ぶ舟べりから少年は何を見たのか?
幼い眼でとらえた人の世のはかなさを描く、処女作「泥の河」。
北陸・富山に舞う幾万の螢を背景に、出会い、別れ、そして愛を濃密な情感と哀切な叙情にこめてとらえた「螢川」。
ネオン彩る都会の一隅にくりひろげる父と子の愛憎劇を軸に、男たち女たちの人情の機微をからめた「道頓堀川」。
川を背景に独自の抒情を創出した宮本文学の原点三部作。
(裏表紙より)







「泥の河」
太宰治賞を受賞した、著者のデビュー作。
著者自身のあとがきにもあるが、『青が散る』と比べると(ここから宮本作品に入ったので、どうしても比べてしまう)やはり言葉が多いように思う。読み始めてから作品に入るのにだいぶ時間がかかった。
しかし、子ども特有の繊細さや危うさ、貧困と倫理(例えば、死んだ人の物を盗むか盗まないか)、そして大人の性を一つ一つ浮びあがらせていく筆致に、気づけば作品の世界にのめりこんでいた。青く燃える蟹と、波打つ男の背中が目の前に浮かぶ。読後は、何とも言えない感情で胸がいっぱいになる。
これがデビュー作、当時著者は(計算上)30歳であったことを思うと、この表現力と構成力はさすがと言うほかない。

「螢川」
特に印象なし。儚い蛍と人の生を重ねるのは、他の作品でもよく見かける。テーマは全く違うが、「火垂るの墓」なんかと比べてしまうと、深みが足りない感は正直否めない。
芥川賞を受賞した作品らしい。うーん・・・。

「道頓堀川」
三部作の中では一番明るい(光と影の光の部分が強い)作品。武内と政夫の親子を軸に話が進む。武内の若いころから政夫が同じくらいの年になるまでが描かれており、短編というより中編の分量。
武内と、武内に世話になっている政夫の友人の邦彦の視点で話が進む。途中で語り手が変わる作品は、個人的にあまり好きではない。登場人物が多いこともあって、読み進んである程度人物のイメージが浮かぶまでは混乱してページを戻ることもあった。ただ、実際、人は色々なところで色々な人と関わって生きているから、そういう意味ではリアリティを感じる部分でもあるか。
最後の武内と政夫の勝負には、胸が熱くなった。
登場人物の中では、ゲイボーイのかおるがいい味出していて、個人的に好きでした。

三部作を通して見てみると、どれもひんやりとした死の匂いがする。だからこそ、その裏返しで「生」が熱を帯びた動的なものになる。哀しさの中にあっても前を向いて生きていく、静かな力強さを感じる。
田舎や地方、特に大阪を舞台にした作品は人間臭さが強すぎて苦手なのだが、裏を返せばそれだけ情景や心理描写がリアルだということでもある。人間の感情と関係の描き方、情感鮮やかなクライマックスへ向かうストーリーのもっていき方、土の匂いや太陽の熱までも感じさせられるような表現の豊かさには、感動さえ覚える。
けれど、それと好きかどうかは別だ。好きかどうかと言われれば好きではないのだが、緻密で重厚で素晴らしい作品だと思う。






==============

人間は書物のみでは悪魔に、労働のみでは獣になる。(徳冨蘆花)

至言です。
私の職業(教員)は、言ってみれば書物と労働の両方を兼ね備えた職業ではありますが、その分自己を過信しないように気をつけなければいけないのだと思います。




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小さな命への、温かい眼差しと愛に溢れている。 『ネコはどうしてわがままか』 
『ネコはどうしてわがままか』  日高 敏隆 ★★★★☆



飼ってもフンが見つからないドジョウのえさは?オタマジャクシを脅かすと皆一斉に逃げるのはなぜ?雌雄同体のカタツムリはなぜ交尾する?
アブラムシ、ボウフラ、ムカデ……みんなみんな生き物たちの動きは不思議に満ちています。
さて、イヌは飼い主に忠実なのにネコはわがままなのは、一体なぜでしょう?
動物行動学の第一人者が、ユーモアたっぷりに解き明かす自然の知恵のいろいろ。
(裏表紙より)







日常の中でいつも目にしてはいるものの、特段興味を払うことはないような小さくて身近な生物たちへの、著者の温かい眼差しと愛に溢れている。
それぞれの生き物について、挿絵も含めて4ページ以内で、何気なく目にする生き物たちの行動の不思議が解説されている。
それらももちろん面白かったが、生き物たちの不思議に魅せられ、あの手この手で解明しようとする、著者をはじめとする人間たちのピュアな情熱も描かれていて、理系出身で生物に関わったことのある私にはとても微笑ましく、面白かった。中でも、セミの鳴き声の秘密を探るために、かの有名なファーブルがセミの近くで大砲をぶっ放したという話には、思わず笑いが込み上げた。
また、大嫌いな毛虫ですら可愛く見えてしまう、大野八生さんのシンプルでありながら温かみのあるイラストも、とても良かった。

読み終えたときには、きっとこう思うはずだ。「生物って面白い!」
小中学生にぜひ読んで欲しい本。

☆-1は、タイトルが誤解を招きやすい(実際、ネコの本だと思って買ったら期待外れだった、との声も見られる)のと、個人的にはもう少しそれぞれの生き物について掘り下げて欲しかったため。
タイトル自体はとても好きなので、せめてサブタイトルがあれば。






==============

自然は一冊の書物である。不可解であり、しかも歴然と明白なるものだ。(ゲーテ)

来年はもう少しコンスタントに更新することが目標です。
数少ない記事に拍手頂いたみなさま、ありがとうございました。




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小説は創作だが、「戦争」はそうではない。 『永遠の0』
『永遠の0』  百田 尚樹 ★★★★☆



「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。
天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる――。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
(裏表紙より)







戦闘機乗りとして特攻で亡くなった一人の男の人生が、彼と共に時間を過ごし戦争を生き残った関係者たちの言葉から明らかになる、という話。そこに、その男の孫である主人公の青年とその姉の物語が絡み合ってくる。

この小説には、宮部久蔵という架空の人物に関わる人間として、実在した人物も多く登場する。
知識として特攻や戦艦、零戦、回天、桜花などについては少しは知っていたつもりでいたが、そこには現実に命を落とした生身の人間がいるということを、読みながら肌で感じた。
ちょうど本作を読んでいるときにテレビで劇場版相棒3を観たこともあって、私たちが今享受している「平和」とは何なのか、改めて考えさせられた。(以下、レビューから脱線するので追記内)



本作では、面子や経歴を重んじ、人を人とも思わず駒のように使い捨てにし、浅はかな作戦の元に若者を大勢死なせた軍上層部(もちろんすべての上層部がそうであった訳ではないが)の愚かさ、決して自ら志願し喜んで国のために死んだのではない特攻兵の姿が何度も描かれているが、それでも「戦争批判に見せかけた戦争賛美だ」という批判があるという。
それは、一人の特攻兵であった宮部の人生をことさら感動的、悲劇的に描くことで、結果的に特攻を美化している、ということらしい。

確かに、それは間違っているとは言えない。しかし、本人がそう思っていたにしろなかったにしろ、一個人ではなく国のために戦う兵士として亡くなっていった人たちをことさらに人間扱いしない方が、逆におかしいのではないかと思う。
戦争とはとても残酷で不条理なものであると同時に、そこには血の通った人間が関わっていて、一人一人の命の分だけ苦しみや悲しみがある。味方も敵もだ。本作は、その両面を描いているのに、一面だけを取り出して「戦争賛美だ」と批判するのは、違うと思う。

だからこそ、巻末の児玉清氏の「解説」は酷い。
「零戦ファンをわくわくさせる」「戦闘機のパイロットはまさに剣豪を思わせる存在であったことを知り、僕は拍手喝采した」「涙の流れ落ちたあと、僕の心はきれいな水で洗われたかのごとく清々しさで満たされた」など、ことさらに美化しているのは著者ではなく彼ではないかとすら思う。どこが「解説」だ。
私個人は、この作品からそんな清々しい感動などは感じなかった。宮部の生き方に胸が詰まるからこそ、そんな宮部を死に追いやった戦争の不条理さや苦々しさがより強く感じられた。
もちろん作品は著者の手を離れた後は読者のものであるから、作品をどう捉えようが個々人の自由だと私は思うし、結局著者の本当の意図などわかりはしないが、「解説」としてこんなものを載せていいのだろうかと思う。(考えようによっては、載っているということは著者がこれを良しとしたということなのか。そうであれば、私の感じ方の方が結果としては著者の意図とずれているということになる。それは個人的にはとても残念だ。)



☆-1は本筋とは関係のない部分なのであまり細かくは書かないが、処女作ということもあるのか、表現の部分で気になるところがいくつか見られた(違う人物が話しているのに、話題転換の表現(「話を戻そう」など)が一緒であることなど)。
それと、姉の恋愛話は必要だったのか…という疑問はあるが、過去に生きた人の人生を辿りながら今を生きる私たちが自分の人生を見直す、という意味においては、主人公の姉がそのモデルになって、私たちと作品を繋ぐ役割をしているのだろう。
それから、これも本筋からは脱線してしまうのだが、百田氏にはその言動がもとでアンチがかなり存在する。そのせいか、本作への批判にはかなり感情的なものも見られる。(ネタがネタだけに、元々賛否両論になるのは当然でもあるが。)小説である以上、作者の主義思想が反映されるのは当たり前だが、作者個人に関する情報が色眼鏡になって作品の見方を曲げてしまうのは残念に思う。



小説として一流だとは思わないが、戦争とはどういうものなのか今までよりも具体的にイメージできるようになり、戦争と平和について考え直すきっかけになったという意味では、私にとってはプラスになった。少しでも長くこの平穏な日常(あくまで私にとっては、だが)を保つためにも、過去の戦争の歴史についてきちんと学ばなければと思わされた。







==============

どうして本を読むのか。それは、物事を「相対的」に見るために必要だから。読書によって、自分を客観視する脳が鍛えられる。さまざまな事例やさまざまな人の心を読書によって感じとれるようになり、意識的か無意識的かは別にして、自分と照らし合わせることができるようになる。だから、大切なんです。(斎藤茂太)






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映(えい)

  • Author:映(えい)
  • マイペース更新。

    ラーメンを食べながら、時々本を読む社会人。
    心を揺さぶる本、価値観を変えてくれる本、爽やかさとともに苦さや切なさを感じさせる本、表現が美しい本、静かな感動を起こしてくれる本、心の奥深くに沁みる本、重さの中にも透徹した雰囲気を持つ本、知的好奇心をくすぐってくれる本、が好きです。


    おもしろそうなのがあったので始めてみた→コトノハ



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